2017.05.01
ペット霊園の突然の閉園。法律上の問題は?
こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。
大阪府枚方市のとあるペット霊園が一方的に閉鎖したことに批判が集まっています。閉鎖したペット霊園では,利用者に十分な連絡が行き渡らないまま,墓の撤去作業などが進められていると,インターネット上で話題となっているようです。
ペットの墓を掘り返したり,勝手に処分したりすることは問題ないのでしょうか。人間ではなくペットの霊園であるという点について,何か法律上独自の問題があるのでしょうか。
●刑事上の責任は生じないが,民事上債務不履行責任や不法行為責任を負う場合はある
そもそも,人間のお墓を勝手に暴いたり,中の骨を処分したりする行為は,刑法上,「墳墓発掘罪」や「墳墓発掘死体損壊等罪」の構成要件に該当します。しかし,これらの罪はペットなどの動物のお墓や骨の場合を想定していませんので,本件でもこれらの罪には該当しません。
また,ペットの骨を山積みにして放置してされているとのことですが,ペットの骨は産業廃棄物にも該当しませんので「産業廃棄物処理法」に違反することもありません。
もっとも,本件ペット霊園の場合には自然葬(埋葬)の場合「7回忌まではお墓にいます」とホームページ上の記載がありました。
一般的にペット霊園と飼い主との間の契約は,お墓部分の土地の賃貸借契約や,ペットの遺骨を保管するという寄託契約の形態をとるものが多いようです。その他,様々な形態がありますが,いずれにしても,一定の期間を区切りながら,契約を更新していく形態をとっていることが多いようです。
本件においては,霊園と飼い主との間の契約の形態や内容がハッキリしていませんが,かりに,契約の期間内に飼い主の承諾を得ることなく一方的に霊園側がペットのお墓を撤去したり,骨を取り出して遺棄したりしたということであれば,債務不履行責任や不法行為責任を負う可能性はあると思われます。
その場合,飼い主は霊園側に対して,債務不履行や不法行為に基づく損害賠償請求をすることとなります。もちろん,それによって飼い主の悲しみや怒りが完全に拭い去れるというものではないかもしれません。
●霊園がとるべきであった対応
ニュース報道等によれば,霊園側は悪臭などに悩まされた周辺住民から立ち退きを求められていたようです。訴訟沙汰となり,土地から立ち退くことという条件で裁判上の和解が成立していたといいます。その点からしますと,お墓などを撤去して,土地から立ち退くこと自体はやむを得なかったのかもしれません。
ただ,それでも,きちんと飼い主に対して連絡・説明し,理解を得たうえでお墓を撤去し,遺骨は飼い主に返還するなどという対応はできたのではないかと思います。
今後ペット霊園を選ぶ際には,契約内容はもちろんですが,霊園側の管理体制などについてもしっかりと吟味することが必要となるでしょう。