離婚・男女問題コラム

2018.03.23

DVの証拠の残し方

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

わが国では,DVの防止と被害者の保護を図るため,平成13年(2001年)10月より「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(DV防止法)」が施行され,平成16年(2004年),平成19年(2007年)及び平成25年(2013年)に改正されています。

もはや説明するまでもないこととなりましたが,DVとはドメスティック・バイオレンス(domestic violence)の略であり,直訳すると家庭内暴力となります。最近では,デートDVなどと称する恋人間のものも含まれるようになりました。

DVは程度が相当ひどい場合には,「その他婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)として法律上の離婚原因ともなり得るので,昨今の離婚原因にはほとんどDVの主張が出てきます(当職が担当する離婚事件は,若干被告の比率が高いのですが,まぁDVの主張が多いこと。若干食傷気味です。)。

もちろん,離婚訴訟などでDVを主張しても,相手方が全面的に認めることはほとんどありません(民事訴訟においては,ほとんどが否認事件です。)。民事訴訟における証明責任のルールにしたがい,DVを主張する側が立証をしていかければなりません。ただ,DVの証拠がまったくないということもよくある話であり,場合によっては証拠を捏造してくることもあります。

相手方から暴力を受けたら基本的には別れる方向で検討せざるを得ないでしょう。相手方が離婚や交際をやめることを拒んだり,ストーカー化する場合に備えて,客観的な証拠を残しておくことはたいへん重要なことです。証拠を示すことができれば,訴訟等で有利に利用できますし,警察等に相談する際も誠実な応対をしてもらえる材料になると思います。

そこで,今回は,「DVの証拠の残し方」について解説したいと思います。なお,DVには経済的暴力や精神的虐待等も含まれますが,ここでは物理的な暴力行為に限定するものとします。

●DVの証拠には何がある?

① 医師の診断書

医師の診断書は,DV事件でよく提出される証拠の一つです。ただし,医師の診断書は必ずしも万能ではありません。医師の診断書で客観的に立証できるのは,傷害を負った事実であり,その受傷原因がDVであることまでは必ずしも立証できません。
そのため,後述のメモや日記などでの補強が必要となります。

② 写真
傷の様子や,壊された物品などの写真も有力な証拠の一つです。生々しい傷跡の写真などは事実認定者である裁判官等に対し,視覚的に訴えることができ,彼らに与えるインパクトも大きいと思います。

③ 電話等の録音,メール
いわゆるハネムーン期と呼ばれる安定期に,DV加害者が謝罪をしてくることがあります。その際のメールや謝罪の録音などは,いわば加害者の自白といえますので有力な証拠になるでしょう。逆に脅迫的な内容もろだしのものも十分活用できます。

④ メモ,日記
DVを受けた状況のメモやそれを記した日記などを作成することはいろいろなところで推奨されています。ただ,相手方がDVを否認している場合に,メモや日記だけでDVが認定されることはまずないと考えてよいのではないでしょうか。メモや日記ですが,裁判上の事実認定においては,その証拠価値はほとんどないと思います(もちろん,油断はできないので,しっかり弾劾しますが)。
とはいうものの,メモや日記は後日DVに関する正確な主張をするために有用ですし,メインの証拠とはならなくても診断書などの客観的証拠を補強する証拠にはなります。その観点からも,ないよりはマシといえますので,やはりメモや日記は作成しておくべきでしょう。
メモの作成の仕方としては5W1Hを意識して,いつ・どこで・誰が誰に対して・何を・どのように行ったかをきっかけや経緯を含めてできる限り具体的に書いておきましょう。一般的には,本人が実際に体験したことというのは具体的に述べられると考えられており,逆に具体性がない供述は信用性を低く見積もられてしまいます。しかし,記憶というものは薄れてしまうものであるから,なるべく体験した日に詳細なメモなり日記をつけておくことが重要です。家族にメールを送るなどしてもいいでしょう。
その他,警察に通報するなどの実績作りも有効です。それなりに傷害を負っている場合は,逮捕までされることもあります。

●できるだけ客観的な証拠を収集することが重要

以上,DVの証拠をみてきましたが,男女の不満というものは2倍にも3倍にも話が盛られるのが通常でしょう。そのため,客観的な証拠に基づかない主張というのは基本的には話半分にしか聞いてもらえないということを知っておきましょう。

DVを本気で立証する気があるのなら,客観的な証拠を残しておくことが重要です。

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