離婚・男女問題コラム

2019.05.23

大麻取締法違反の罪――「所持」のみ処罰され,「使用」が処罰されない理由【追記あり】

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

昨日,元アイドルグループのメンバーと女優の二人(内縁関係にあるとされています。)が大麻取締法違反の罪で逮捕されたというニュース報道がありました。大麻取締法違反といいますが,具体的な実行行為は「所持」です。ちなみに報道では当該大麻が「二人の物」か「一人の物」がで共犯者供述が食い違っているとされています。しかし,「所持」罪について所有の意思,所有権の有無は問われません(覚せい剤の所持について,東京高判昭和50年4月28日高検速報2100参照)。

皆さんもご存じかもしれませんが,大麻の使用は,一般には処罰の対象とはされていません。大麻取扱者が所持の目的以外の目的に大麻を使用した場合に処罰されるだけです(大麻取締法3条2項,同法24条の3)。この場合の法定刑は,5年以下の懲役,営利の場合,7年以下の懲役又は情状により7年以下の懲役及び200万円以下の罰金です(未遂罪も処罰されます。)。

そもそも,大麻取締法は,大麻草全体を規制対象にはしていません。大麻取締法が規制対象としている大麻とは,大麻草(カンナビス・サティバ・エル…学名)及びその製品をいい,大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く),大麻草の種子及びその製品は除かれます(大麻取締法1条)。すなわち,大麻草の成熟した茎や種子を持っていたとしても「所持」には当たらないのです。

そうしますと,その理由が気になりますよね。そこで今回は,大麻取締法違反が大麻草の成熟した茎や種子を持っていることを「所持」として処罰していない理由や「使用」を処罰していない理由を解説します。

●大麻草の成熟した茎や種子を持っていても「所持」にならない理由:大麻草全体に有害な物質が含まれているわけではないから

理由ですが,「大麻草全体に有害な物質が含まれているというわけではないから」です。大麻は,その成分中のテトラヒドロカンナビノールが中枢神経に作用し,著しい向精神作用を示すのです。このテトラヒドロカンナビノールという成分が,大麻特有の妄想,幻覚,恐怖状態,錯乱状態などを引き起こし,有害性があるとされるのです。また,テトラヒドロカンナビノールは,大麻草の樹液に多く含まれ,大麻草の花や葉っぱにはこの樹液が多く含まれているのに対し,成熟した茎や種子にはテトラヒドロカンナビノール成分はほとんど含まれていないのです。
日本在来種の麻も大麻なのですが,日本では伝統的に茎の部分は麻織物や麻縄に利用され,種子の部分は七味唐辛子に使用されるなどして日常生活に深く染み込んでいます。こうしたことから「成熟した茎や種子の部分は有害性がほとんどない」として規制対象から外されたのです。

●大麻の「使用」を処罰していない理由:罪刑法定主義の要請

「有害性がほとんどない」といいましたが,これは成熟した茎や種子にまったくテトラヒドロカンナビノールが含まれていないというわけではなく,微量なテトラヒドロカンナビノールが含まれていることがあることを意味します。そのため,この茎や種子が体内に入った場合に,尿検査で微量な大麻成分(テトラヒドロカンナビノール)が検出されることが絶対にないとはいえないわけです。
そしてもっと重要なことは,尿として排出された大麻成分が,大麻の茎の部分であったのか,種子の部分であったのか,それとも樹脂(樹液が固まったもの)や花の部分や草の部分であったのか,特定できないことです。すなわち,尿検査で大麻の陽性反応が出たからといって,それが規制対象である大麻の花や葉っぱ,あるいは大麻樹脂といわれるものをその人が摂取したとは必ずしも言えなくなるわけです。
そこで,覚せい剤とは異なり,大麻について,使用罪は処罰範囲から除外されたのです。決して有害性がほとんどないから大目に見て処罰していないわけではありません。刑法の大原則である罪刑法定主義の要請から処罰範囲を限定化・明確化すべく不処罰とされているのです。

【参考文献】 シリーズ捜査実務全書8・藤永幸治編集代表『薬物犯罪』(第2版・東京法令出版)

【2023年12月7日追記】

令和5年12月6日(水)、大麻の「使用」を禁止すること等を盛り込んだ大麻取締法などの改正法が成立しました。

改正大麻取締法などは、参議院本会議で賛成多数で可決、成立しました。

大麻の乱用を防ぐため、すでに禁止されている「所持」や「譲渡」に加え、「使用」を禁止することが盛り込まれており、不正な使用は7年以下の懲役(拘禁刑)となります。

一方、治療用に大麻草を原料にした医薬品の使用を認めるとともに、現在は繊維や種子の採取、研究目的のみで認められている大麻草の栽培について、医薬品などの原料を採取する目的でも認めるとしています。

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