離婚・男女問題コラム

2020.02.18

特別養子縁組に関する民法等の改正

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

いよいよ約120年ぶりに改正された民法の施行が近づいてまいりました(施行期日は令和2年4月1日)。当職も10数年ぶりに択一受験六法(いろいろ吟味した結果,LECの『司法試験&予備試験 完全整理択一六法 民法』にしました。)を購入し,施行に備えております。
民法改正は債権法に注目が集まりがちですが,実は,令和2年4月1日施行の民法等に改正が施されている分野があります。それは,「特別養子縁組」です。
そこで,今回は,特別養子縁組に関する民法等の改正について解説します。

●改正の目的

児童養護施設に入所中の児童等に家庭的な養育環境を提供するため,特別養子縁組の成立要件を緩和すること等により,制度の利用を促進する点にあります。
厚生労働省検討会が,全国の児童相談所・民間の養子あっせん団体に対して実施した調査の結果,「要件が厳格」等の理由で特別養子縁組制度を利用できなかった事例は「298件(平成26年~平成27年)」もあったそうで,うち「実父母の同意」を理由とするものが「205件」,「上限年齢」を理由とするものが「46件」だったそうです。
そこで,見直しのポイントとしては,

① 特別養子制度の対象年齢を拡大すること
② 家庭裁判所の手続を合理化して養親候補者の負担軽減を図ること

が挙げられます。

●ポイント① 養子候補者の上限年齢の引上げ(民法の改正)

1 改正前(施行前の現行法)
養子候補者の上限年齢について,
原則 特別養子縁組の成立の審判の申立ての時に「6歳未満」であること
例外 6歳の達する前から養親候補者が引き続き養育 ⇒ 「8歳未満」まで可
としていました。
現行制度において上限年齢が原則6歳未満,例外8歳未満とされている理由は,
① 養子候補者が幼少のころから養育を開始した方が実質的な親子関係を形成しやすいから。
② 新たな制度(とはいうものの,採用されたのは昭和62年(1987年)改正・翌年施行ですから,果たして新たな制度といえるのか疑問です。)であるところ,まずは,必要性が明白な場合に限って導入すべきであるから。
という点にありました。
しかし,現行制度では,年長の児童について,特別養子縁組を利用できないとの児童福祉の現場等からの指摘を受けていました。

2 改正後
養子候補者の上限年齢の引上げ等を図っています。
⑴ 審判申立時における上限年齢(新民法第817条の5第1項前段・第2項)
原則 特別養子縁組の成立の審判の申立ての時に「15歳未満」であること
例外 ①15歳に達する前から養親候補者が引き続き監護されている場合において, 
      ②やむを得ない事由により15歳までに申立てできなかった場合には,
「15歳以上」でも可。
※ 15歳以上の者は自ら普通養子縁組をすることができることを考慮して15歳を基準としたものです。
⑵ 審判確定時における上限年齢(新民法第817条の5第1項後段)
審判確定時に18歳に達している者は,縁組不可。
⑶ 養子候補者の同意(新民法第817条の5第3項)
養子候補者が審判時に15歳に達している場合には,その者の同意が必要。
(15歳未満の者についても,その意思を十分に考慮しなければならない。)

●ポイント② 特別養子縁組の成立の手続の見直し(家事事件手続法及び児童福祉法の改正)

1 改正前
養親候補者の申立てによる1個の手続しか認められていませんでした。
すなわち,養親候補者が申し立て,特別養子縁組の成立の審判手続を経て,審判が下されるという手続のみに限られていました。
(審理対象)
・実親による養育が著しく困難又は不適当であること等(実親の養育能力(経済事情や若年等)や虐待の有無が審理されます。)
・実親の同意(審判確定まで撤回可能)
・養親子のマッチング(養親の養育能力や養親と養子の相性等が審理され,6か月以上の試験養育が必要となります。)

これに対しては,児童福祉の現場等から養親候補者の負担について以下のような指摘がありました。
指摘① 実親による養育状況に問題ありと認められるか分からないまま,試験養育をしなければならない。
指摘② 実親による同意の撤回に対する不安を抱きながら試験養育をしなければならない。
指摘③ 実親と対立して,実親による養育状況等を主張・立証しなければならない。

2 改正後
改正法の肝は「二段階手続の導入」にあります。
⑴ 二段階手続の導入(新家事事件手続法第164条・第164条の2関係)
特別養子縁組を以下の二段階の審判で成立させることとしました。
(ア) 実親による養育状況及び実親の同意の有無等を判断する審判(特別養子適格の確認の審判)
⇒ 審理対象は,「実親による養育状況」や「実親の同意の有無」等です。養親となる者が第1段階の審判を申し立てるときは,第2段階の審判と同時に申し立てなければなりません。2つの審判を同時にすることもでき,手続長期化の防止に努めています。
(イ) 養親子のマッチングを判断する審判(特別養子縁組の成立の審判)
⇒ 審理対象は「養親子のマッチング」です。養親候補者は,第1段階の審判による裁判所の判断が確定した後に試験養育をすることができます(上記指摘①及び同②に配慮)。
実親は,第2段階には関与しませんし,同意を撤回することもできません。
※ 6か月以上の試験養育をしますが,試験養育がうまくいかない場合には却下されます。
⑵ 同意の撤回制限(新家事事件手続法第164条の2第5項関係)
⇒ 実親が第1段階の手続の裁判所の期日等でした同意は,2週間経過後は撤回できません(上記指摘②に配慮)。
⑶ 児童相談所長の関与(新児童福祉法第33条の6の2・第33条の6の3)
⇒ 児童相談所長が第1段階の手続の申立人又は参加人として主張・立証をします(上記指摘③に配慮)。

●施行期日
令和2年4月1日施行

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