2016.10.20
日本橋の離婚相談|フレンドリー・ペアレント・ルールをご存じですか?
こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。
フレンドリー・ペアレント・ルールが重視される珍しい判決が,千葉家庭裁判所松戸支部で判決として下されました(千葉家庭裁判所松戸支部平成28年3月29日平成24年(家ホ)第19号。現在控訴中です。)。
あまり聞きなれないかもしれない「フレンドリー・ペアレント・ルール」。今回は,これについて解説します。
●フレンドリー・ペアレント・ルールとは?
離婚に際して同居親 (監護親)を決定する際には,
①元夫婦としての葛藤感情と切り離して別居親と子どもの面会交流に協力できるか
②子どもに別居親の存在を肯定的に伝えることができるか
③子どもが面会交流に消極的な場合に別居親との面会交流を子どもに働きかけることを同居親の責務と理解できているか
等が同居親としての適格性の判断基準とされる原則のことです。
この判断基準は “Friendly Parent Rule:フレンドリー・ペアレント・ルール”と呼ばれ,別居親と友好関係を保てる親を同居親決定の際に優先することを意味しています。
フレンドリー・ペアレント・ルールの訳語は,いまだ定まっていないようで,『友好的親条項』や『非監護親に対する寛容性の原則』などと訳されています。
離婚後の親権者・監護者の決定は,子の利益(民法819条6項)や福祉を基準として行われなければなりません。
しかし,父母共に子に対する強い愛情を有している場合には,何が子の利益であるかの判断は,さまざまな事情の総合判断によって決定されているのが実情です。
そして,近時,別居親と子の面会交渉を認めることができるか,別居親を信頼して寛容になれるか,元夫婦としての感情と切り離して,子に相手の存在を肯定的に伝えることができるかという点が,親権の適格性の判断基準の一つとなりつつあることが注目されているのです。
先ほどあまり聞きなれないかもしれないと述べましたが,わが国でも,東京高決平 15 年 1 月 20 日家月 56 巻4号127頁で採用され,その後も判断基準のひとつの要件とされています(東京家裁八王子支部平成 21 年 1 月 22日審判家月 61 巻 11 号 87 頁)。
離婚後の親子の交流を促進させる親を適格な親とみなす考えといえますが,後述するように,ハーグ条約批准後も民法改正後(民法766条)もなかなか重視されていないのが現状です。
●千葉家庭裁判所松戸支部平成28年3月29日平成24年(家ホ)第19号
事案は,5年以上別居状態を続ける夫婦が長女(8)の親権を争った離婚等請求訴訟です。
千葉家裁松戸支部(庄司芳男裁判官)は,自分が親権を持った場合には,離婚後も相手方に認める長女との面会交流の日数について「年間100日間程度」を提案した夫を親権者と定め,妻に同居の長女を引き渡すよう命じました。妻側は「月1回」を希望していました。
このように,面会交流に寛容な点を重視し,子どもと別居中である夫を親権者とした判断は異例です(おそらく,当職も含めて,同種の事案に携わる多くの弁護士がそう思っていると思います。)。
判決書によりますと,夫婦は関係がうまくいかなくなり,平成22年5月に妻が夫に無断で長女と実家に戻った,いわゆる「連れ去り」事案です。夫と長女が会ったのは同年9月が最後でした。
妻が離婚や親権を求めて提訴しました。妻は「長女を慣れ親しんだ環境から引き離すべきではない」と主張したのですが,裁判所は「両親の愛情を受けて健全に成長するのを可能にするために,父親を親権者とするのが相当」としました。
相対する代理人弁護士の中には,安易に(ありもしない)DV等を主張し緊張感を高め,場合によっては離婚するまで子どもに会わせないという戦略をとる方もおられます(当職はしませんが)。
そのような(愚かな)戦略を採られる弁護士には大きな反省を迫る内容といえるでしょう。
既にわが国はハーグ条約を批准しています。子の最善の利益という観点からも,フレンドリー・ペアレント・ルールという価値観を共有することは重要です。
●コメント
これまでは,いろいろいわれていますが,親権者の指定は,母子優先の原則と監護の安定性(継続性の原則)の2つの要素から(のみ)判断がされていたのが現状です。
この現状は,ハーグ条約批准後も民法766条改正後も,ほとんど変わっていません。しかし,上記千葉家裁松戸支部判決は,この2つに要素に加え,「面会交流の寛容性」を考慮したものであるといえます。
そもそも,母子優先の原則といっても,子と父母との愛着が保障されているのであれば,別に「母」を優先する理論的根拠を喪失することとなります。
また,監護の安定性(継続性の原則)も,場所の移動はあまり重要ではなく両親との情緒的つながりが大事であると解されます。
そうすると,8歳の子どもにとっては,生活の中心は,家庭内であり父母との情緒的コミュニケーションがとれる方に監護をさせた方が良いということになりますから,一方の監護親が監護してそれが継続しているからといって,これを尊重しなければならない理由はとくにないこととなります。
上記千葉家裁松戸支部判決では,母子優先の原則や監護の安定性(継続性の原則)について,利益衡量の要素として決して最重要視していません。
また,子の意向も8歳ですと通常考慮されませんから,「面会交流の寛容性」という要素を考慮し,子の最善の利益から父母両方から愛情を受けられること,父側の監護に問題がないことが期待されていることなどが判決理由として挙げられているものといえます。
面会交流は,「子の監護義務を全うするために親に認められる権利である側面を有する一方,人格の円満な発達に不可欠な両親の愛育の享受を求める子の権利としての性質をも有するものというべきである」(大阪家審平 5・12・22)ということに思いを馳せるべきです。
フレンドリー・ペアレント・ルールというと大人が作ったものといえるかもしれませんが,子どもの視点からは,もっとも合理的な判断枠組みといえ,大人の叡智といえるものかもしれません。
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