年の瀬が近づくこの時期、実は離婚件数が増加する傾向にあることをご存知でしょうか。統計によると、12月は1年の中で2番目に離婚件数が多い月となっています。

「年内に区切りをつけたい」という心理的な理由もあるかもしれませんが、実は税制面での明確なメリットが存在するのです。
離婚というと感情的な決断と思われがちですが、タイミング次第で経済的に有利になることがあります。特に年末年始は、離婚を考えている方にとって重要な分岐点となる時期です。本記事では、弁護士の視点から、離婚するのに有利な時期について詳しく解説していきます。
【女性編】12月離婚がおすすめの理由


子どもを育てる女性にとって、12月は離婚のタイミングとして大きなメリットがあります。税制上の優遇措置を最大限活用できるためです。
子どもを育てる女性は12月31日までの離婚で税制メリット!
離婚後に子どもを養育する女性は、一定の要件を満たせば寡婦控除やひとり親控除を受けることができます。これらの控除の基準日が12月31日であることが、12月離婚をおすすめする最大の理由です。
12月31日までに離婚が成立すれば、その年の1年分の所得に対して控除が適用されます。一方、1月以降に離婚した場合、前年分の控除は受けられません。たった数日の違いが、1年分の税制メリットに影響するのです。
ひとり親控除の場合、所得税で35万円、住民税で30万円の控除を受けることができます。所得税率が10%の方であれば、年間で約6万円程度の税負担が軽減される計算になります。
注意点:年末調整と確定申告
12月中に離婚が成立しても、年末調整に間に合わなかった場合は、翌年の確定申告で控除を申請する必要があります。また、年末は役所の窓口も混雑しますので、年内に確実に離婚を成立させるためには、余裕を持って手続きを進めることをおすすめします。
離婚届の提出だけでなく、事前の話し合いや書類準備も含めて、遅くとも12月中旬までには行動を開始するのが理想的です。
【男性編】1月以降の離婚がおすすめの理由


女性とは対照的に、妻を扶養していた男性にとっては、年明け以降の離婚が税制上有利になります。
扶養していた男性は年明け離婚が有利
所得税法では、その年の12月31日の状況を基準に配偶者控除や扶養控除などを計算します。つまり、12月31日時点で婚姻関係にあれば、1年分の控除を受けることができるのです。
逆に言えば、12月中に離婚をしてしまうと、その年の1月から11月まで配偶者を扶養していたにもかかわらず、1年分の控除がすべて受けられなくなってしまいます。
配偶者控除は最大38万円(所得税)、配偶者特別控除も段階的に適用されるため、年内に離婚するか年明けに離婚するかで、数万円から十数万円の税負担の差が生じる可能性があります。
したがって、男性にとっては1月以降、できれば1月1日以降の離婚の方が経済的メリットが大きいことになります。
このように、離婚のタイミングは男女で最適な時期が異なるという点に注意が必要です。双方が納得できる時期について、冷静に話し合うことも大切でしょう。



男性の離婚のポイントについては下記にまとめていますので、合わせて読んでみてください


離婚を切り出すベストタイミング


税制面でのメリットを考慮して離婚時期を決めたとしても、実際に離婚を成立させるまでには様々な準備と時間が必要です。ここでは、離婚を切り出すタイミングについて解説します。
証拠集めは離婚を切り出す前に!
裁判で離婚を認めさせたり、慰謝料を請求したりするためには、不貞行為やDV、モラハラなどの証拠が必要になる場合があります。
証拠集めで最も重要なのは、相手に離婚の意思を伝える前に行うということです。離婚を切り出した後に証拠を確保しようとしても、相手が警戒して証拠を消してしまう恐れがあります。
集めるべき証拠の具体例
不貞行為の証拠:
- 不倫相手とホテルに出入りする写真や動画
- 肉体関係を示すメッセージやメールのやり取り
- クレジットカードの利用明細(ホテル代など)
- 探偵の調査報告書
DV・モラハラの証拠:
- 暴力によって負った傷の診断書
- 怪我の写真(日付入り)
- 暴言を録音した音声データ
- 第三者の証言
財産分与のための証拠:
- 銀行の通帳(残高、取引履歴)
- 不動産登記簿
- 有価証券の取引明細
- 生命保険証券
- 退職金規定や見込み額がわかる書類
希望時期の半年以上前に切り出すのが理想
「12月に離婚したい」と思っても、実際にはそこから逆算して準備を始める必要があります。
協議離婚の場合、離婚届さえ提出すれば手続き自体は終わりますが、それまでの間に夫婦で話し合って離婚条件を決める必要があります。



証拠を活かす方法については下記にもまとめていますので合わせてご確認ください。


話し合うべき内容は多岐にわたる
- 親権:どちらが子どもを引き取るか
- 養育費:金額、支払い方法、期間
- 面会交流:頻度、方法、条件
- 慰謝料:金額、支払い方法
- 財産分与:対象財産の確定、分与方法
- 年金分割:按分割合の決定
これらの条件について双方が納得するまで交渉するには、想像以上に時間がかかる可能性があります。
離婚手続きにかかる期間の目安
協議離婚: 条件がまとまれば即日可能ですが、実際には数ヶ月かかることも珍しくありません。
離婚調停: 調停を申し立ててから終了するまでに平均約6ヶ月かかることが多いようです。月1回程度の調停期日が設定され、数回にわたって話し合いが行われます。
離婚裁判: 平均審理期間は14.7ヶ月となっており、裁判で離婚を目指すには1年以上かかってしまう場合がほとんどです。
相手がなかなか離婚に応じてくれない可能性や、調停・裁判に発展する可能性も考えると、離婚したいと思っているタイミングより半年以上前、できれば1年前に離婚を切り出すのが理想的です。
例えば、12月中の離婚を目指すのであれば、遅くとも6月頃には離婚の意思を伝え、話し合いを開始する必要があるでしょう。裁判も視野に入れるなら、さらに早い段階からの準備が必要になります。
まとめ


離婚のタイミングには、税制面での明確なメリット・デメリットが存在します。
- 女性(特に子どもを育てる方):12月31日までの離婚で寡婦控除・ひとり親控除を1年分受けられる
- 男性(妻を扶養していた方):1月以降の離婚で配偶者控除・扶養控除を1年分受けられる
このように、男女で最適な離婚時期が異なるという点は、実務上も重要なポイントです。
ただし、税金面でのメリットだけで離婚時期を決めるのではなく、以下の点も総合的に考慮することが大切です。
- 子どもへの影響(学期の区切り、進学時期など)
- 住居の確保(引っ越しシーズンとの兼ね合い)
- 仕事への影響(転職や復職のタイミング)
- 精神的な準備期間



そして何より重要なのが、証拠集めと時間の確保です。離婚を有利に進めるためには、相手に気づかれる前に証拠を集め、希望する離婚時期から逆算して余裕を持って行動を開始することが成功の鍵となります。
離婚は人生の大きな転機です。感情的になりがちな問題だからこそ、冷静に計画を立て、適切なタイミングで行動することが重要です。
離婚を考えている方、離婚のタイミングに迷っている方は、ぜひ早めに弁護士にご相談ください。あなたの状況に応じた最適なアドバイスとサポートをさせていただきます。














