
「突然『犬は俺が引き取る』と言われた…」



「大切な家族を手放したくない…」
離婚協議の中で、ペットの引き取りをめぐって争いになるケースが増えています。愛するペットとの別れを迫られる辛さは計り知れませんが、感情的になる前に、まず法律上の正しい知識を持つことが重要です。
本記事では、離婚時のペットトラブルについて、法的な判断基準から具体的な対処法まで、弁護士が詳しく解説します。


監修:弁護士 濵門俊也
東京新生法律事務所所属 / 保有資格:弁護士(東京弁護士会所属)
離婚問題に関する相談実績年間300件以上です。離婚問題でお困りのことがあればお気軽にご相談ください。


監修:弁護士 濵門俊也
東京新生法律事務所所属 / 保有資格:弁護士(東京弁護士会所属)
離婚問題に関する相談実績年間300件以上です。離婚問題でお困りのことがあればお気軽にご相談ください。
ペットは法律上「財産分与」の対象


多くの方が誤解されていますが、ペットは法律上「物」として扱われます。そのため、子どもの親権や養育費とは全く異なる判断基準が適用されます。
重要な区別を理解しましょう
ペットの所有権を考える上で、まず確認すべきは「いつから飼い始めたか」です。
- 結婚前から飼育していた場合 → 特有財産(元の飼い主に権利がある)
- 結婚後に飼い始めた場合 → 共有財産(財産分与の対象)
結婚前からあなたが飼っていたペットであれば、法的にはあなたの特有財産として、圧倒的に有利な立場になります。一方、結婚後に夫婦で飼い始めた場合は、どちらが引き取るか協議が必要になります。
ペットは1匹を2人で分けることができないため、最終的にはどちらか一方が引き取ることになります。



通常の財産分与については下記のページにまとめております。合わせてご確認ください。


判断基準は「ペットの幸せ」が最優先


では、結婚後に飼い始めたペットの場合、どのように引き取る人が決まるのでしょうか。
裁判所や調停では、「ペットの幸せ」を最優先に考えて判断されます。具体的には、以下のような基準が重視されます。
主な判断基準
✅ なつき具合 ペットが誰に一番なついているか、誰と一緒にいることが幸せかが考慮されます。
✅ 世話の実績 日常的に誰が散歩をしていたか、給餌をしていたか、動物病院に連れて行っていたかなど、実際の世話の実績が重要です。
✅ 飼育環境 住居(ペット可物件か、広さは十分か)、時間的余裕、経済力など、離婚後に適切に飼育できる環境があるかが評価されます。
証拠集めが勝負の分かれ目です。 口頭で「私が世話をしていた」と主張するだけでは不十分で、客観的な証拠を示すことが求められます。
準備すべき証拠を「見える化」する


ペットの引き取りを希望する場合、あなたが主たる飼育者であったこと、そして離婚後も適切に飼育できることを証明する必要があります。
確認・収集すべき書類
- 購入契約書・譲渡契約書 ペットを迎えた際の契約書類。名義人が誰かは重要な証拠になります。
- 登録情報,ペット保険の名義 犬の場合は自治体への登録、ペット保険の契約者名義なども確認しましょう。
- 動物病院の記録・ワクチン証明書 通院記録やワクチン接種の記録。誰が連れて行っていたかがわかります。
- フード購入履歴・日常的な写真 日々の世話を証明するレシート、一緒に過ごす日常の写真や動画なども有効です。
特に、結婚前から飼っていた場合は、その証拠があれば特有財産として圧倒的に有利になります。購入時期や譲渡時期がわかる書類は必ず保管しておきましょう。
離婚後の現実的な飼育能力を示す


いくら「愛情がある」と主張しても、離婚後に実際にペットを幸せにできる環境がなければ、引き取ることは難しくなります。
評価される飼育能力
住環境
- ペット飼育可能な物件か
- ペットに十分な広さがあるか
- 動物病院へのアクセスは良いか
経済力
- 安定した収入があるか
- 医療費やフード代を負担できる経済力があるか
時間
- 散歩や日常的なケアをする時間があるか
- 長時間の留守番をさせないか
感情論だけでなく、現実的な飼育条件が重視されることを理解しておきましょう。引っ越し先の賃貸契約書(ペット可の記載がある)や、勤務形態がわかる書類なども、準備しておくと良いでしょう。
引き取れない場合の取り決め


もし、どうしてもペットを引き取れない状況になったとしても、諦める必要はありません。離婚後もペットと関わり続けることは可能です。
交渉できる内容
面会交流
- 面会の頻度(月○回など)
- 面会の時間や場所
- 宿泊を伴う面会の可否
費用分担
- 医療費の負担割合
- フード代やペット用品の費用分担
- 突発的な治療費の取り決め
これらの内容は、必ず書面化することが重要です。口約束だけでは、後々トラブルになる可能性があります。離婚協議書や、できれば公正証書として残しておくことをおすすめします。
争いになった場合の対応


話し合いで解決できない場合、以下の流れで解決を目指します。
まずは夫婦間で話し合いを行います。弁護士を代理人として交渉することも可能です。
協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。調停委員が間に入り、解決を目指します。
調停でも合意できない場合、ペットの所有権確認訴訟などの民事訴訟を提起することになります。
絶対にやってはいけないこと
❌ 無断でペットを連れ出す・隠匿する これは違法行為になる可能性があります。法的に不利になるだけでなく、刑事責任を問われることもあります。
❌ 感情的な対応 感情的になって相手を非難したり、SNSで批判したりすることは避けましょう。冷静な対応が求められます。



争いになった場合こそ、証拠を整理して冷静に対応することが大切です。
まとめ:大切な家族を守るために


ペットをめぐる離婚トラブルは、愛情が深いほど長引きがちです。しかし、正しい法的知識と適切な証拠準備があれば、大切な家族を守ることができます。
5つの対処ポイント
- 判断基準はペットの幸せ最優先 — 感情論だけでなく、客観的な判断基準を理解する
- 証拠を集めて実績を「見える化」 — 書類や写真で世話の実績を証明する
- 現実的な飼育能力を評価 — 離婚後の住環境・経済力・時間を具体的に示す
- 面会・費用をルール化 — 引き取れない場合も関わり続ける方法を書面化
- 冷静に証拠整理して対応 — 感情的にならず、法的に適切な手続きを踏む
ペットは法律上「物」として扱われますが、私たちにとっては大切な家族です。だからこそ、感情的になりすぎず、冷静に最善の解決策を見つけることが重要です。お一人で抱え込まず、まずは専門家にご相談ください。














