2017.04.25
10万円の現金が13万5000円に!?…オークションサイト「現金出品」の法的問題
こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。
最近ネットオークションサイト「メルカリ」や「ヤフーオークション」で,「諭吉10枚セット」などの現金が売られていることが話題となっています。4万円が5万600円,5万円は5万9500円などで売られていました。先の「諭吉10万セット」は,13万5000円の価格がついていたこともあります。
ネット上では「かなり斬新な買い物」などと驚きの声が寄せられているようですが,「これって法的な問題はないの?」といった投稿も寄せられています。そこで,今回は「現金出品」の法的な問題点について,説明します。
●「現金売買」法的な問題は?
ネットオークションサイトで売られている現金を購入する時は,クレジットカード払い,現金での支払い(ATMやコンビニ入金),携帯キャリア会社を介した入金など複数の方法があるようです。
そもそも「現金」を販売することに,法的な問題はないのでしょうか?
現金化業者にも,買取式とキャッシュバック式があります。そのうち買取式は利用者から品物を買い取り,転売することで利益を得ています。買取式現金化業者は中古品の売買に関わるので,古物商として登録が必要となります。
「希少価値の高い硬貨・紙幣」として売買するには,売る側に古物商としての許可が必要となります。「現在流通している硬貨・紙幣」についてはマネーロンダリングのおそれが高いように思います(実際,メルカリは現在流通している硬貨・紙幣の取扱いを中止しています。)。
今回は,利用者が多いと思われるクレジットカード払いについて説明しましょう。これは現金を買う側からすれば,「クレジットカードの現金化」をしているということとなります。
クレジッドカードには,「ショッピング枠」と「キャッシング枠」の2つの枠があります。「ショッピング枠」は文字通り「買い物」で利用できるもので,現金を直接手にすることはできません。一方の「キャッシング枠」は,コンビニエンスストアのATMなどで現金を借りることができるものです。基本的にキャッシング枠はショッピング枠の中に含まれています。
ヤフオクやメルカリに出品されている「現金」を購入することは,「ショッピング枠」を現金化することになります。現金を買う側としては,余分にお金を支払う代わりに速やかに現金を直接手に入れることができる仕組みとなっています。現金を売る側としては,余分に支払われたお金のうち,サイト運営者の手数料を引かれた残りの金額が利益となります。
どういう人が利用するのか気になりますが,多重債務者など,支払のため至急現金が必要な事情を抱える人たちでしょう。ただし,この行為は換金目的であるとしてクレジットカードの規約違反となるおそれがあります。発覚すれば,クレジットカード自体が使えなくなる可能性がありますのでご注意ください。
●クレジットカード現金化の違法性
それでは,ネットオークションを使ったクレジットカード現金化については,違法性があるといえるのでしょうか。結論からいえば,現状ではブラックに近いグレーゾーンにあるといえるでしょう。
ネット上では,「クレジットカード現金化は違法」と記載されている記事を見かけます。もちろん,クレジットカード現金化の業者が摘発される例が増えてきたことは間違いありません。
しかし,クレジットカード現金化の業者が摘発された事案をよくよくみてみますと,摘発された事案においてもクレジットカード現金化の行為そのものが違法とされて摘発されたというわけではなく,「貸金業法」(無許可営業)と「出資法」(違法金利など)を適用してその2つの法律違反として摘発されているようです。
貸金業法と出資法ですが,それぞれどこが法律に抵触したのでしょうか。
まず,クレジットカード現金化については,業者の行為が実質的にお金を貸し付ける行為であることから,貸金業者と認定しました。貸金業者としてお金を貸し付ける業務をするためには貸金業法によって登録しなければなりません。しかしながら,この登録をしていなかったことから,貸金業法に違反するとされました。
また,貸金業者としてお金を貸し付けるためには,出資法による上限金利がありますが,クレジットカード現金化による業者の貸付けは,この上限金利を上回った金利で貸し付けていれば,出資法違反となります。
なお,摘発されたのはクレジットカード現金化の業者であり,クレジットカード現金化の利用者は摘発を受けたことはありませんし,これからも摘発されることは少ないと考えられます。
しかしながら,ネットオークションを使った現金化が違法化の方向に向かっているのは間違いありませんので,クレジットカード現金化が規制される法律ができるなど,今後は,クレジットカード現金化自体が違法となる可能性もあります。法規制の動向には注意が必要です。