2019.04.26
令和元年5月1日は祝日か?休日か?-「10連休」の謎に迫る
こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。
今朝クリーニング屋さんにスーツを持って行ったところ,「濵門さんは10連休ですか。」と尋ねられました。私は「カレンダーどおりですかね。」と答えました。
今年のゴールデンウィークは,「平成」から「令和」への改元,今上天皇の退位と新天皇の即位といった重大な節目となりそうです。ただ,「10連休」の理由について深く考えていない日本国民も多くいらっしゃると思います(チコちゃんに叱られそうです。)。
そこで,今回は,「10連休」の謎について解説してみます。
●祝日と休日とは何が違うの?
祝日と休日とでは大きな違いがあります。
祝日に関する法律といえば「国民の祝日に関する法律」(以下「祝日法」といいます。)に祝日についての様々な決まりが規定されています。祝日法第1条には,「国民の祝日」(祝日)とは,「自由と平和を求めてやまない日本国民が,美しい風習を育てつつ,よりよき社会,より豊かな生活を築きあげるために,国民こぞって祝い,感謝し,又は記念する日である。」と定義されています。
この祝日法がさす「休日」には,国民の祝日,振替休日,祝日と祝日に挟まれた日,の3種類が含まれます。これを祝日法に基づく休日といい,同法第3条に規定されています。
祝日法第3条(休日)
1 「国民の祝日」は休日とする。
2 「国民の祝日」が日曜日に当たるときは,その日後においてその日に最も近い「国民の祝日」でない日を休日とする。
3 その前日及び翌日が「国民の祝日」である日(「国民の祝日」でない日に限る。)は,休日とする。
●2019年のゴールデンウィーク
ところで,5月1日が祝日か休日かでどう変わるのでしょうか?
もし祝日となりますと,4月29日は「昭和の日」,5月3日は「憲法記念日」という祝日ですから,5月1日が祝日だとしますと祝日法第3条第3項により,祝日と祝日の間に挟まれた4月30日及び5月2日の平日が休日に変わります。
そうすると,4月28日~5月6日までの9日間の大型連休が出現します。土曜日の4月27日も含めると,10日間の超大型連休になります。これが10連休の理由です。
もし5月1日がただの「休日」だとしますと,祝日法第3条第3項は適用されませんので,4月30日及び5月2日は平日のままとなり,「大型飛び石連休」に様変わりです。
さて,実際はどうなのでしょうか。
実は法律があります。2019年は,新天皇が即位する5月1日と「即位礼正殿の儀」が行われる10月22日を「国民の祝日」とすることが法律で定められました。
そうしますと,2019年のゴールデンウィークも,つぎの3種類に分けることができます。
【国民の祝日】4月29日(昭和の日),5月1日(新天皇即位),3日(憲法記念日),4日(みどりの日),5日(子どもの日)
【振替休日】5月6日(5日が日曜のため)
【休日】4月30日,5月2日(祝日と祝日に挟まれた日)
●君は「10連休」を取ることができるか?!
冒頭で「カレンダーどおり」と発言した私は「10連休」となりますが,あなたは「10連休」を取ることができるでしょうか。雇用されている従業員にとって会社に出勤しなくてもよい日,すなわち労働義務がない日というのは,国民の祝日に関する法律に拘束されません。実際は,就業規則や労働契約の規定によって決まるのです。
例えば,就業規則で「休日は土曜日,日曜日,国民の祝日とする。」とだけ規定されているだけであれば,規定を杓子定規に適用すれば,2019年の場合,4月30日や5月2日,6日は,会社所定の休日には該当しないこととなります。
その理由は,たしかに,祝日法によれば,祝日と祝日に挟まれた日なので休日とはなりますが,それは,あくまで法律上は休日となるというだけであり,労働者が勤務している会社の休日は別のルール,つまり就業規則や労働契約で決まるという点にあります。
4月30日や5月2日及び6日は,「土曜日」でもありませんし,「日曜日」でもありません。もちろん,「国民の祝日」でもありません。カレンダーでは赤字になっていても,国民の祝日ではない休日ですから会社所定の休日にならないわけです。
かりに上記の規定のような就業規則とはなっていても,「祝日法に基づく休日」には会社に出勤しない,という慣行が認められるような職場も多いと思います。
このような職場であれば,労働者と使用者側の間において,規則に明確なルールがないものの,長年守られてきた労使慣行のひとつとして,「4月30日や5月2日は会社に出勤する義務のない日である」という主張も成り立ち得ると思います。労使慣行といいますのは,就業規則等で明文化されているものではないものの,労働条件を補完するものです。
●5月1日は亡き妻の祥月命日
最愛の妻を亡くし,1年が経とうとしています。アニメ機動戦士Zガンダムに登場するクワトロ・バジーナ大尉の名言につぎ台詞があります。
「生きている間に,生きている人間のすることがある。それを行うことが,死んだ者への手向けだ。」
先日鑑賞してきた映画『キングダム』(原作ファンも納得の最高の出来栄えでした。あの個性的なキャラクター達を見事に演じられていました。戦闘シーンのアクションもすごかったです。)の冒頭でも信が漂の死を乗り越えて,「天下の大将軍」を目指します。「天下の代将軍」は目指せませんが,大志を抱いて自身の使命を全うしたいと思います。