離婚・男女問題コラム

2021.12.22

離婚事件(調停・訴訟)の管轄裁判所

こんにちは。東京都中央区日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

本日は、離婚事件(調停・訴訟)の管轄裁判所について解説をします。

【離婚調停の管轄裁判所】
●管轄
 離婚調停の管轄裁判所は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定める裁判所と定められています(家事事件手続法245条1項)。したがって、原則としては、離婚調停は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に対して、申し立てることとなります。
 たとえば、申立人が東京、相手方が熊本に在住している場合には、熊本家庭裁判所に申し立てることとなるわけです。

●自庁処理
 家事事件手続法9条1項ただし書は、「家庭裁判所は、事件を処理するために特に必要があると認めたときは、職権で、家事事件の全部又は一部を、管轄を有する家庭裁判所以外の家庭裁判所に移送し、又は自ら処理することができる」と定めています。これは、家庭裁判所が、管轄外の事件の処理を行うことを認めているもので、いわゆる自庁処理といいます。
 したがって、相手方住所地を管轄する家庭裁判所が極めて遠くて実際に行くのが困難である等の場合には、この自庁処理がなされることを期待して、自庁処理の上申書を添付して申立人の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てる場合もあり得ます。
 しかし、相手方から、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所への移送を求める申立がなされることもあります。
 また、調停期日の進行として、いわゆる電話会議の手続により、実際上、遠隔地の裁判所に出頭しなくても申立人は電話で対応することにより調停期日を進めることも可能ですので(家事事件手続法54条、258条1項。ただし、離婚調停の成立については電話会議ではできません。家事事件手続法268条3項)、自庁処理として受け付けてくれるのは、必ずしも容易ではないといえます。

【離婚訴訟の管轄裁判所】
●管轄
 離婚訴訟の管轄裁判所は、離婚訴訟の当事者(原告と被告)となる夫婦どちらかの住所地を管轄する家庭裁判所が原則となります(人事訴訟法4条1項、2条、1条)。
 なお、離婚訴訟では、合意管轄や応訴管轄は認められていません。
 したがって、原則としては、離婚訴訟は、申立人又は相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に対して、申し立てることとなります。
 たとえば、原告が東京、被告が熊本に在住している場合にも、東京家庭裁判所に申し立てることができるのです。

●自庁処理
 離婚訴訟に先立って離婚調停が行なわれた家庭裁判所が、離婚訴訟の管轄裁判所ではないという場合があり得ます。たとえば、離婚調停が合意管轄によって行われたときのような場合です。
 このような場合、その調停が行なわれた家庭裁判所は、調停の当事者の意見その他の事情を考慮して、特に必要があると認めるときは、申立て又は職権で自ら審判及び裁判をすることができるとされています(人事訴訟法6条。いわゆる自庁処理)。
 ただ、単に調停事件が行われたという理由だけでは、自庁処理は認められないと考えられています。

●遅滞を避ける等のための移送
 家庭裁判所は、当事者及び尋問を受けるべき証人の住所その他の当事者を考慮して、訴訟の著しい遅滞を避け、又は、当事者の衡平を図るため、必要があるときは、申立てにより又は職権で、他の管轄裁判所へ移送することがあります(人事訴訟法7条)。
 なお、未成年の子がいる場合には、移送するにあたっては、その子の住所又は居所が考慮されます(人事訴訟法31条)。

●付調停
 離婚調停を経ないで、離婚訴訟が提起された場合には、訴訟を受け付けた家庭裁判所は、訴訟を却下するのではなく、職権で、調停に付する決定をするのが原則です(家事事件手続法257条2項本文)。これは、離婚訴訟が調停前置を採っているためです。
 ただし、「裁判所が事件を調停に付することが相当でないと認めたとき」には、裁判所は、調停に付さずに、離婚訴訟を進行させます(家事事件手続法257条2項ただし書)。

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